気候変動

取り巻く環境

再生可能エネルギーを積極的に利用することや、事業者としてサステナブルな脱炭素社会の実現に貢献することを、全ての企業が強く意識する時代を迎えています。

17項目の目標から成るSDGs(持続可能な開発目標)は、目標7に「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、目標13に「気候変動に具体的な対策を」と明記しています。また、2020年から実施段階に入っているパリ協定は、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃まで抑える努力をすることを目標に掲げています。

これらを達成するためには、石油や石炭などに代わる再生可能エネルギーや、効率よくエネルギーを利用できる仕組みを開発・普及させることが急務です。企業においても環境(E)と社会(S)の変化を捉え、適切なガバナンス(G)を行うことで持続可能な社会づくりへの貢献が求められます。

方針

豊田通商グループはマテリアリティの1つに「クリーンエネルギーや革新的技術を活用し、自動車/工場・プラントCO2を削減することで、脱炭素社会移行に貢献」を掲げ、再生可能エネルギー戦略を4つの重点分野における成長戦略のうちの1つに位置付けています。

再生可能エネルギーはもちろんのこと、モビリティの分野で次世代環境車普及を支えるリチウムの安定供給、電池の3R(リビルト、リユース、リサイクル)、その他の分野でもバイオプラスチックや再生アルミをはじめとしたCO2削減効果のある商品の拡販など、さまざまな角度から豊田通商ならではの気候変動対策に取り組み、企業の成長との両立を実現していきます。

TCFDに基づく開示

気候関連の情報開示および金融機関の対応をどのように行うかを検討するためFSB(金融安定理事会)によって設立されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が、2017年6月に最終報告書を公表しました。最終報告書では企業などに対して気候関連のリスクおよび機会に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目について、ステークホルダーに対して情報を開示することを推奨しています。

豊田通商は気候変動を重要な経営課題の一つとして認識しており、2019年5月にTCFD提言への賛同を表明しました。TCFD提言に基づき、気候変動が事業活動に与える影響について、情報開示を拡充していきます。

1. ガバナンス

豊田通商では気候変動に関わる事業機会をマテリアリティの一つとして選定しており、マテリアリティの取り組みについては、年1回定期的に開催されるサステナビリティ推進委員会で確認し、取締役会へ適宜報告しています。その内容は、同委員会の構成メンバーである各営業本部CEOを通じて、事業戦略に反映されています。また同委員会では、2020年よりマテリアリティに係るKPIを設定し、進捗をレビューしています。

省エネに関する目標達成状況や気候変動に関する法令改正および新たな要求事項への対応状況については、年に一度定期的に安全・環境会議にて審議しPDCAサイクルの確認を行っています。その審議内容は、同会議の構成員である各営業本部・グループ会社担当者を通じて、事業活動に反映されています。

また、2021年4月には全社横断組織としてカーボンニュートラル推進タスクフォースを立ち上げ、月1回定期的に開催されるカーボンニュートラル推進会議にて脱炭素社会への移行に向けた戦略を議論しています。ここでは自社グループの温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下GHG)排出削減の進捗管理も行っています。

サステナビリティ推進委員会 気候変動を含むマテリアリティに係る方針、重要事項の決定
委員長 貸谷伊知郎(取締役社長)
担当役員 富永浩史(取締役・CSO)
事務局 経営企画部 サステナビリティ推進室
安全・環境会議 気候変動に関する法令対応などの進捗管理
議長 佐合 昭弘(副社長)
担当役員 齋藤 彰徳(CSKO)
事務局 安全・環境推進部
カーボンニュートラル推進会議 カーボンニュートラル実現に向けた戦略の決定
議長 貸谷 伊知郎(取締役社長)
担当役員 今井 斗志光(副社長・CDTO)
事務局 カーボンニュートラル推進部

2. 戦略

(1)シナリオ分析

豊田通商は気候変動問題を世界が直面する重要な課題の一つとして捉え、気候変動の影響が大きい事業を選定し、TCFD提言に沿った形でシナリオ分析を実施しています。

事業への影響については、影響が大きい要素を選定してシナリオ分析しました。リスクでは移行リスク(政策・規制、技術、市場、評判)および物理リスク(急性・慢性)を、機会では資源効率、エネルギー源、製品およびサービス、ならびに市場を考慮しました。

また、当社では2030年にGHG排出量を2019年比50%削減することを目指しており、今回のシナリオ分析においても同様に2030年を分析のタイムフレームとしています。

参照シナリオ

気候変動に起因して、当社の事業環境が大きく変化した際に、新たなビジネスの機会および事業レジリエンスを評価し、事業への影響を分析することを目的として、IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)およびIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などの下記シナリオを参照しています。

区分 シナリオの概要 主な参照シナリオ
1.5℃/2℃未満シナリオ 脱炭素社会の実現へ向けた政策・規制が実施され、世界全体の産業革命前からの気温上昇幅が1.5℃/2℃未満に抑えられるシナリオ。4℃シナリオと比べ、移行リスクは高いが、物理リスクは低く抑えられる。
  • Net Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE), IEA World Energy Outlook 2021.
  • Sustainable Development Scenario (SDS), IEA World Energy Outlook 2021.
  • IPCC RCP2.6
4℃シナリオ 新たな政策・規制は導入されず、CO2排出量は継続的に増加するシナリオ。1.5℃/2℃未満シナリオと比べ、移行リスクは低いが、物理リスクは高くなる。
  • Stated Policies Scenario (STEPS), IEA World Energy Outlook 2021.
  • IPCC RCP8.5
対象事業選定

当社事業のうち、気候変動の影響が大きい事業(下記A~Dの観点)をシナリオ分析の対象事業として選定し、リチウム事業、アルミ溶湯事業、再生可能エネルギー事業、自動車販売事業についてシナリオ分析しました。今後、対象事業の範囲を拡充していきます。

当シナリオ分析におけるシナリオ・事業環境認識は、国際的な機関などが提示する主なシナリオを基にしており、当社の中長期の見通しではありません。

(2)各事業におけるシナリオ分析結果
リチウム事業

豊田通商は、電動車に不可欠な車載用リチウムイオン電池の原料を供給するため、アルゼンチンのオラロス塩湖で炭酸リチウムの生産を2014年に開始しています。また、日本国内では、福島県双葉郡楢葉町において水酸化リチウムの製造工場を建設しており、2022年に生産開始を予定しています。

気候関連リスク・機会
区分 内容
リスク アルゼンチン炭酸リチウム生産事業における災害・異常気象などによる生産量への影響
機会 自動車の電動化などによるリチウム製品需要の変動
各シナリオ下における事業への影響
  • いずれのシナリオにおいてもリチウム電池を使用する電動車や蓄電池の需要増加が見込まれる。
  • アルゼンチン炭酸リチウム生産事業における、降雨に伴うリチウム生産効率悪化のリスクについては、2021年実績比較で降雨量に変化が見られず、リチウム生産への影響は軽微と想定される。
  • 1.5℃/2℃未満シナリオと4℃シナリオを比較すると、1.5℃/2℃未満シナリオの方が電動車や蓄電池需要の大きな増加が見込まれ、当事業全体の機会は拡大すると想定される。
当社の対応策

電動車の本格的な普及に伴うリチウムの需要増加に対し、既存能力の増強により長期安定的な供給体制構築を目指します。また、今後の電池高容量化に伴う水酸化リチウムの需要増加を見込み、事業領域を拡大し、安定供給に向けた体制構築を進めていきます。

アルミ溶湯事業

豊田通商は、再生アルミをよりCO2削減効果のある溶湯状態でお客さまへ供給しており、世界トップクラスの取り扱いとなっています。今後、電動車の普及は加速し、それに伴い軽量化に必要となるアルミ部品の需要が高まっていきます。また、環境への配慮から、アルミスクラップの再資源化による再生アルミの需要の増加も見込まれています。

気候関連リスク・機会
区分 内容
リスク ガソリン車と電動車の販売構成比の変化に伴う事業への影響
炭素税などの導入に伴う事業への影響
機会 電動化に伴うアルミ需要の変動
ルミ新地金から再生アルミへの置き換え需要の変動
各シナリオ下における事業への影響
  • 1.5℃/2℃未満シナリオでは、燃費規制の強化などに伴い、総販売台数に占めるガソリン車の割合が減少するが、一方で電動車の販売比率が増加することによる軽量化の需要増加、加えてグローバルでのリサイクル材の需要増加が見込まれ、当事業全体の機会は拡大することが想定される。
  • 4℃シナリオでは、1.5℃/2℃未満シナリオで想定される燃費規制の強化などが行われないことが見込まれ、当事業全体への影響は限定的であると想定される。
当社の対応策

当事業は重点分野である「循環型静脈事業」の一つと位置付けられており、アルミリサイクルバリューチェーンの川上から川下までの機能強化をグローバルに進めます。炭素税導入などによるコスト増加に対してはGHG排出量削減に向け、新技術などの活用により排出削減に努めます。

再生可能エネルギー事業

豊田通商は、風力、太陽光、水力、地熱、バイオマスなどの発電事業を全世界規模で展開しており、アフリカ、新興国での開発促進、洋上風力開発などの事業にも注力しています。

気候関連リスク・機会
区分 内容
リスク 再生可能エネルギー関連政策(固定価格買取・補助金・減税など)の見直しによる事業への影響
機会 再生可能エネルギーニーズ増加に伴う事業への影響
各シナリオ下における事業への影響
  • 1.5℃/2℃未満シナリオでは、再生可能エネルギー政策の見直しによる固定価格買取制度の廃止などの影響を受ける可能性はあるものの、全世界において政策の進展や再生可能エネルギーに対する需要の大幅な増加に伴い、関連する技術革新の進展、再生可能エネルギーが基幹エネルギーとなることなどが見込まれる。よって、再生可能エネルギーに対する需要に対応して開発を進めていくことで当事業全体の機会は拡大することが想定される。
  • 4℃シナリオでは、政策の見直しにより固定価格買取制度が廃止されることなどの可能性があるが、再生可能エネルギーに対する需要は、1.5℃/2℃未満シナリオほどの高まりはないものの一定の増加が見込まれることから、当事業全体への影響は限定的である。
当社の対応策

当事業は当社の重点分野と位置付けられており、既存ビジネスモデルを強化してグローバル展開を加速させるとともに、電源メニューの多様化やエネルギーマネジメントなど、事業領域の拡大を図っています。競争力ある再生可能エネルギーの安定供給で、より良い地球環境づくりに貢献します。

自動車販売事業

豊田通商は、トヨタグループを中心とした自動車・輸送用機器メーカーが国内外で生産する乗用車、バス・トラックなどの商用車、産業車輌、補給部品を世界各国へ輸出しています。また、世界150カ国に及ぶグローバルネットワークを通じて、輸入販売総代理店や販売店の事業を展開しています。

気候関連リスク・機会
区分 内容
リスク ガソリン車と電動車の販売構成比の変化に伴う事業への影響
機会 電動車需要の変動
各シナリオ下における事業への影響
  • いずれのシナリオにおいても、新興国を中心にグローバルでの新車総販売台数の増加が見込まれるため、当事業全体のリスクは軽微と想定される。
  • 1.5℃/2℃未満シナリオでは、燃費規制の強化などに伴い、総販売台数に占めるガソリン車の販売割合が減少するものの、電動車の販売割合が増加することが見込まれ、当事業全体の機会は拡大することが想定される。
  • 4℃シナリオでは、1.5℃/2℃未満シナリオで見込まれる燃費規制の強化などが行われず、ガソリン車および電動車の販売割合への影響は小さいため、当事業全体への影響は限定的である。
当社の対応策

新車販売市場は新興国を中心に今後も拡大していくことが想定されていることから、当社は全世界での販売体制を強化していきます。また、電動車ラインアップの拡充に併せて、その基幹部品である電池素材の資源確保や電池の3R(リビルト、リユース、リサイクル)の事業領域を開拓し、電動車の普及を促進します。

3. リスク管理

気候変動を含む環境リスクは、高い基準で管理しています。気候変動に係る事業機会とリスクは、安全・環境会議とサステナビリティ推進委員会で審議され、構成メンバーが事業戦略や活動に組み込んでいます。

投融資案件

投融資委員会には副社長・CSO・CFOが、投融資協議会にはCFOが、また、投資戦略会議には社長・副社長・CSO・CFO・経営企画部長がメンバーとして参加することで、投資案件がESGに与える影響を確認しています。投融資委員会・協議会の評価項目の中には環境リスクがあり、投融資委員会または投融資協議会に上げられた一定要件以上の案件はそのリスクを確認します。何らかの懸念がある場合には、それに対する対応やその後の改善報告も義務付けられています。

また、当社は環境マネジメントシステムに関する国際規格であるISO14001を取得しており、国内外の連結子会社を対象に本社による環境内部監査を3年に一度実施するなど、そのリスク管理プロセスをモニタリングしています。

投資戦略

豊田通商は、脱炭素社会の実現に向けて、2030年までの間に1.6兆円規模の投資を実施します。強化する事業として、「エネルギーをつくる」「エネルギーを集める・整える」「モノをつくる」「モノを運ぶ」「モノを使う」「廃棄物処理をする」「再利用する」という産業ライフサイクルの各段階において、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を支える5つの注力分野を設定しました。

<注力分野>
  • 再エネ・エネルギーマネジメント:投資規模 7000億円
  • バッテリー:投資規模 4000億円
  • 水素・代替燃料:投資規模 2000億円
  • 資源循環・3R(Rebuild/Reuse/Recycle):投資規模 2000億円
  • Economy Of Life(医衣食住関連):投資規模 1000億円

4. 指標と目標

GHG排出削減目標と今後の取り組み

自社の操業におけるカーボンニュートラル(CN)は、社会のCNへの貢献同様に不可欠です。そこで当社グループは、脱炭素社会移行への貢献に向けた具体的な方針として、2021年7月に当社単体・国内海外連結子会社(Scope 1*1、Scope 2*2)における、当社グループの事業活動を通じたGHG排出量を、2030年までに2019年比で50%削減することを目指し、さらに2050年にCNとする目標を策定しました。

当社グループは徹底的な省エネ・再エネ推進(事務所・工場のLED化、所有建物の太陽光発電設置)、生産プロセス・物流でのCO2排出削減、技術革新による排出量削減などに取り組むことで、この実現を目指します。

産業ライフサイクルを通じてGHG削減に貢献する事業を、全社レベルで加速・推進できるのは当社グループの強みです。当社グループ全従業員が一丸となり、全力で取り組んでいくことで、社会課題の解決に貢献していきます。

  1. ※1自社での燃料の使用などによるGHGの直接排出(石炭・ガスなど)
  2. ※2自社が購入した電気・熱の使用によるGHGの間接排出
  3. ※3当社グループの Scope 1、2排出量が対象。GHGプロトコルにて算出

業界団体との連携

日本貿易会

当社は 気候変動緩和策・適応策の検討・実施を重要課題と捉え 新たなビジネス、ソリューションの創出に積極的に努めると共に、一般社団法人日本貿易会(貿易会)の正副会長会社として他業界・他団体と連携し2050年カーボンニュートラルに向けたパリ協定における長期目標の達成への貢献を目指しています。
一例として エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)の特定荷主制度において、特定荷主企業は輸送会社と連携し省エネを進めることを求められていますが、現行法が求める指標・目標がその実現を困難としており省エネの進捗を遅らせているとして、貿易会が設定した特定荷主制度対象の会員企業と政府当局(経済産業省・資源エネルギー庁)との意見交換会の場を通じて問題提起しました。
そのことが契機となり 経済産業省・資源エネルギー庁 荷主判断基準ワーキンググループに 貿易会を通じた当社のオブザーバー参加が実現しました。
2021年より同ワーキンググループの「荷主省エネの課題と検討の方向性」に関する業界ヒアリングにおいて、当社 安全・環境推進部の室長と担当者が貿易会を通じてオブザーバー参加して上述の問題提起を行い、省エネ法改正にあたり 輸送業者との省エネ活動が推進しやすい環境づくりを目指した働きかけや提言を継続しています。

水素協議会

水素は利用時にCO2を排出せず、またバイオマスや再生可能エネルギーを使って製造することができ、且つ貯蔵も可能なことから、低炭素社会の実現に向けた有力な選択肢になると認識しています。当社は、エネルギー移行に資する水素について統一した長期的なビジョンを持つ大手エネルギー、輸送機器産業の企業によるグローバルなイニシアチブである「水素協議会」にSupporting Memberとして、2017年から加盟しています。脱炭素に向けて水素を活用しようとする企業が多く加盟するグローバルな協議会の一員になることで、脱炭素という大きな目標を持つ企業と広く情報・意見交換し、また世界の水素関連情報の収集することで、当社の水素事業の推進に繋げるとともに水素社会実現に貢献することを目的としています。

現在、当社は水素社会実現の原単位モデルづくりのため、港湾、公共交通・物流等の分野にて、水素製造・供給からFC(燃料電池)モビリティ導入までの利活用モデルの構築やFC外販 及び FC搭載機器メーカーの開発支援などに取り組んでいます。刻々と変わるマーケット動向や規制強化が進む状況下、当社が貢献できるこれら分野を含め各国における水素利活用拡大と水素社会実現が確実に進展するために水素協議会が取り組むべきこととして、水素・FCを使用する動機付けになるようなユーザーへのインセンティヴやメカニズムの創出、GHG算出方法など水素に対する国際的な統一基準作り等を、毎年行われる当協議会の重点活動計画策定の場において提案しています。

豊田通商グループでのCO2排出量削減

豊田通商グループでは、生産設備の集約や待機電力の削減などによりCO₂排出量を削減しています。

国内グループ会社の省エネ対策として、工場を中心に生産設備の集約(寄せ止め)、明かり窓の設置、LED照明、インバーター制御の導入による消費電力の削減、非稼働時のエアコンプレッサー停止などによる待機電力の削減などを実施し、CO2の排出量削減に取り組んでいます。

豊田通商の名古屋本社では、ビッグアスファンの導入、フリーアドレス化による座席集約により消費電力削減に取り組んでいます。また、豊田支店では、太陽光発電、蓄電池、EMSによる使用電力の再エネ利用率の向上を実現しました。

豊田通商名古屋本社のフリーアドレス
豊田通商名古屋本社のフリーアドレス
豊田通商名古屋本社のビッグアスファン
豊田通商名古屋本社のビッグアスファン
豊田通商豊田支店の外観および蓄電システム
豊田通商豊田支店の外観および蓄電システム

気候変動への適応

豊田通商は、「省エネ法」や「温対法」等の国の気候変動に関する法規制を支持し、年一回行政に、エネルギー使用量、省エネルギー目標の達成状況、温室効果ガス排出量についての報告書を提出しています。なお省エネ法における事業者クラス分け評価制度では、省エネが優良な事業者とされる「Sクラス」の評価を受けています。また、気候変動の影響に対応し、被害の防止または軽減を目標として気候変動への適応策を講じています。豪雨や猛暑などの気象災害リスクは高まっており、これらリスクを想定したBCP(事業継続計画)を策定・管理・運用することが重要と認識し、グループ全体で取り組んでおります。

<事例「タイ国の洪水発生時に代替拠点で事業継続」>

豊田通商では、気候変動の物理的リスクにより、重要な経営資源が使用不能になることを想定してBCPを策定し、様々な対策を講じています。

2011年にタイ国北部・中部を襲った大洪水では、バンコク市内や7つの工業団地に被害が及び、日系企業約450社が被災しました。2年後の2013年10月にも再び大規模な洪水が起きた時には、タイ国最大規模のアマタナコーン工業団地が浸水するなど再び甚大な被害が発生しましたが、いずれも豊田通商グループの運送会社で同地域に拠点を持つ「TTK Asia Transport (Thailand) Co., LTDでは、予めBCPで決めていた代替拠点に人員、所有トラックを全て移動させ、事業を中断することなく継続させることができました。

気候変動のリスクと機会の戦略(外部との協働)

環境フレンドリーであるために、エネルギーの分野では、再生可能エネルギーやクリーンエネルギーの利用があります。

豊田通商グループとして強みを持つ風力発電分野における安定化とコスト低減を追求することと並行して、地熱・水力など電源メニューの拡大、アフリカ・中東など地域の拡大、蓄電・送電・小売など機能の拡大にも取り組み、再生可能エネルギー事業のさらなる強化を図っていきます。

一方、自動車関連ではHVやEVなど次世代自動車の普及に伴い、エコカー向けのバッテリーに使うリチウムの需要が急増しています。リチウムはレアメタルの一種で、日本はリチウム原料を100%輸入に依存しています。このような気候変動に関する機会への取組みとして、次世代自動車の普及のための新たな供給ソースの開拓に向けて、豊田通商はリチウムの鉱量調査を行い、アルゼンチン北西部のオラロス塩湖に着目し、2012年塩湖開発プロジェクトの権益を25%相当取得後、2014年12月より炭酸リチウムの生産を開始しました。今後も次世代環境を支えるリチウム電池を安定的に供給し、脱炭素社会への移行に貢献していきます。

<外部との協働>

その他にも、中部地方の産・官・学が一体となって組織された環境パートナーシップCLUB(EPOC)のメンバーとして様々な取組みに参加しています。

EPOCは、環境行動の社会への浸透・風土づくりや環境行動に関する情報発信および国際交流活動を推進するもので、当社はEPOCを通じて中部圏から環境対応に関する情報発信を行い、世界に誇れる環境先進地の形成とともに安全かつ快適な循環型経済社会の構築を目指しています。

COOL CHOICE

豊田通商は、省エネ・脱炭素型の製品への買換・サービスの利用・ライフスタイルの選択など、地球温暖化対策に資する「賢い選択」をしていこうという環境省が推奨する取り組みに賛同しています。また、新たな服装ガイドライン「~Be yourself~」を策定し、豊田通商で働くすべての方々を対象に、自主的に服装を判断し、着用する年間クールビズ・ウォームビズにも対応しました。

CDP

CDP

当社は2017年3月期よりCDPに参加しています。CDPは、2000年にロンドンで設立された国際NGOで、企業に対して気候変動への戦略や具体的な温室効果ガスの排出量に関する公表を求めるプロジェクトです。運用総額100兆ドルを超える機関投資家を代表して、企業へ質問状を送付、回答を分析し評価、スコアを公表しています。スコアはA, A-, B, B-, C, C-, D, D-の8段階で格付けされます。

CDP 2021 評価結果
  • 気候変動:A-
  • ウォーター:A-
  • フォレスト(パーム油):B 、フォレスト(木材):A- 、フォレスト(大豆):B

ISO 50001

当社は2020年にISO50001:2018(エネルギーマネジメントシステム)を取得しました。対象範囲は、省エネ法に基づく特定事業者の届出の対象である国内事業所(11都道府県18カ所)および福利厚生施設。拠点ごとにエネルギー管理標準を作成し、その実施状況を省エネ監査で定期確認することで、省エネ活動の推進に努めています。

パフォーマンスデータ

当社では下記データを把握・開示しております。

  • 温室効果ガス(Scope 1, Scope 2)排出量(国内事業所)
  • 温室効果ガス(Scope 1, Scope 2)排出量(海外事業所)
  • 温室効果ガス(Scope 1)排出量タイプ別内訳
  • 温室効果ガス Scope 3カテゴリー別内訳
  • 内部炭素価格
温室効果ガス(Scope 1, Scope 2)排出量(国内事業所)
温室効果ガス(Scope 1, Scope 2)排出量(国内事業所)
集計範囲:豊田通商(本社・支店・営業所・出張所)および国内連結子会社
電力のCO2排出係数: 環境省・経済産業省公表《電気事業者別排出係数》(2022.1公表)の基礎排出係数
電力以外のCO2排出係数: 環境省・経済産業省公表《温室効果ガス算定・報告マニュアル》Ver.4.7
温室効果ガス(Scope 1, Scope 2)排出量(海外事業所)
温室効果ガス(Scope 1, Scope 2)排出量(海外事業所)
集計範囲:海外連結子会社
換算係数出典:(電力)IEA Emission factors 2019
温室効果ガス(Scope 1)排出量タイプ別内訳
(単位:t-CO2)
2019年 2020年 2021年
CO2 485,607 399,786 472,268
CH4/N2O/ HFCs/PFCs/ SF6/NF3 他 0 0 0
合計 485,607 399,786 472,268
集計範囲:豊田通商(本社・支店・営業所・出張所)および国内連結子会社、海外連結子会社尚、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度を踏まえ、年間3,000t-CO2eを超える排出を対象としています。
温室効果ガス Scope3カテゴリー別内訳
(単位:t-CO2
2019年 2020年 2021年
カテゴリー2 (資本財) 126,565 117,711 132,184
カテゴリー3 (Scope1に含まれない燃料・エネルギー関連) 14,410 17,505 17,854
カテゴリー4 (輸送(上流)) 21,127 17,167 20,093
カテゴリー5 (廃棄物) 3,109 4,395 7,864
カテゴリー6 (出張) 1,589 1,727 1,714
カテゴリー7 (通勤) 3,755 4,218 4,212
カテゴリー8 (リース資産) 0 0 0
カテゴリー14 (フランチャイズ) 0 0 0
合計 170,555 162,723 183,921
豊田通商(本社・支店・営業所・出張所)および国内連結子会社
但しカテゴリー4は豊田通商・豊田スチールセンター・豊通エネルギーの3社
算定基準:《サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位について(Ver.3.1)》に基づき、《サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.1)》(以下DB)の係数を用いて算定
カテゴリ2:報告年における連結ベースの有形固定資産取得額にDBの「資本財価格あたり排出原単位」を乗じて算定
カテゴリ3:報告年における燃料及び電力・熱使用量にDBの「電気・熱使用量当たりの排出原単位・燃料調達時の排出原単位」を乗じて算定
なお燃料についてはDBに参考として掲載されているIDEA V2.3の係数を参照し算定
カテゴリ4:環境省・経済産業省の「温室効果ガス算定・報告マニュアル」に基づき、豊田通商・豊田スチールセンター・豊通エネルギーをそれぞれ荷主とする国内輸送に関わるものを集計
但し期間は年度ではなく暦年にて算定
カテゴリ5:事業系一般廃棄物および産業廃棄物を種類別・処理方法別に分け、DBの「廃棄物種類・処理方法別原単位」を乗じて算定(有価物は算定より除外)
カテゴリ6:各拠点毎の従業員数に、DBの「従業員数当たりの排出原単位」を乗じて算定
カテゴリ7:各拠点毎の従業員数に、DBの「勤務形態別都市区分別従業員数・勤務日数当たり排出原単位」を乗じて算定
カテゴリ8:リース機器の使用によるCO2排出はScope1、2にて報告しているため、0
カテゴリ14:フランチャイズ事業に該当するものはないため、0

インターナル・カーボンプライシング

J-クレジットの購入コストを当面のインターナル・カーボンプライシングとして認識し導入しており、2021年4月~2022年3月のJ-クレジット購入コスト(約4.3百万円)をインターナル・カーボンプライシングとして社内の座席毎に賦課(110円/席・月)しています。

※当社では、国内全ての事業所(11都道府県18カ所)で使用する電力を再生可能エネルギー発電由来のJ-クレジットを活用し、2019年1月以降の使用電力をCO2フリーにしすることにより実質100%の再エネ化を実現。

(J-クレジット:再生可能エネルギーの活用などの取り組みによる、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度)

2021年度
内部炭素価格 約430万円

2021年7月に発表した温室効果ガス排出削減目標を達成するために、新たに「社内カーボンプライシング制度」を導入しました。営業部の事業活動におけるGHG排出量が、2019年のGHG排出量に対して、増えた場合は炭素コストとして社内管理上の利益からマイナスし、減った場合には、炭素クレジットとして同利益に加算していく制度です。こうした制度導入により社内における気候変動への取組みを更に促進してまいります。

第三者認証

上記のパフォーマンスデータの一部はLRQAリミテッドによる第三者認証を受けています。